2022年5月28日

万葉の人々・花に心を託す/中西進

…ごくごく庶民も、なにかに感動すると、歌を詠んでいたって事なんですか
いま歌は特殊でしょ、自然に喋ってると、歌の口調になる時代でしたね (^-^)

巻十 山を詠む

2177 春は萌え 夏は緑に 紅のまだらに見ゆる秋の山かも

春者毛要はるはもえ 夏者緑丹なつはみどりに 紅之くれなゐの 綵色尓所見まだらにみゆる 秋山可聞あきのやまかも

秋雑歌

 

巻十四 東歌

3400 信濃なる千曲の川の細石も 君し踏みてば 玉と拾はむ

信濃奈流しなぬなる 知具麻能河泊能ちぐまのかはの 左射礼思母さざれしも 伎弥之布美弖婆きみしふみてば 多麻等比呂波牟たまとひろはむ

信濃國歌 相聞 千曲川 女歌

 

巻八 大伴坂上郎女の歌

1500 夏の野の茂みに咲ける姫百合の 知らえぬ恋は苦しきものぞ

夏野之なつののの 繁見丹開有しげみにさける 姫由理乃ひめゆりの 不所知戀者しらえぬこひは 苦物曽くるしきものぞ

夏相聞 片思媿 忍恋媿

 

巻十四 東歌

3505 うち日さつ宮の瀬川の顔花の 恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も

宇知比佐都うちひさつ 美夜能瀬河泊能みやのせがはの 可保婆奈能かほばなの 孤悲天香眠良武こひてかぬらむ 伎曽母許余比毛きぞもこよひも

相聞 長野県

 

巻八 山部宿禰赤人の歌

1424 春の野にすみれ摘みにと来しわれぞ 野をなつかしみ 一夜寝にける

春野尓はるののに 須美礼採尓等すみれつみにと 来師吾曽こしわれぞ 野乎奈都可之美のをなつかしみ 一夜宿二来ひとよねにける

春雑歌 野遊び 風流

 

巻八 志貴皇子のよろこびの御歌

1418 石走る垂水の上のさ蕨の 萌え出づる春になりにけるかも

石激いはばしる 垂見之上乃たるみのうへの 左和良妣乃さわらびの 毛要出春尓もえいづるはるに 成来鴨なりにけるかも

春雑歌 喜び

 

巻五 梅花の歌

822 我が園に梅の花散る ひさかたの天より雪の流れ来るかも

和何則能尓わがそのに 宇米能波奈知流うめのはなちる 比佐可多能ひさかたの 阿米欲里由吉能あめよりゆきの 那何列久流加母ながれくるかも

梅花宴 太宰府 天平二年睦月十三日 宴席 大伴旅人

 

巻十八 宴席に雪月梅花を詠む歌

4134 雪の上に照れる月夜に 梅の花折りて贈らむ愛しき子もがも

由吉乃宇倍尓ゆきのうへに 天礼流都久欲尓てれるつくよに 烏梅能播奈うめのはな 乎理天於久良牟をりておくらむ 波之伎故毛我母はしきこもがも

右一首 家持作 天平勝宝元年十二月 宴席 題詠

 

巻一 天皇の内大臣うちのおほまへつきみ藤原朝臣にみことのりして、春山萬花しゅんざんばんくわにほひ秋山千葉しうざんせんえういろどりとを競憐きせはしめたまふ時、額田王ぬかたのおほきみ、歌を以ちてことわる歌

16 冬ごもり 春さりれば 鳴かざりし 鳥も鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど 山をみ 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の の葉を見ては 黄葉もみぢをば 取りてぞしのふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山われは

雑歌 額田王 近江朝 春秋優劣

 

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