万葉集 巻十九 4290-4292 巻末の絶唱三首 ( ^ - ^ )
廿三日、興に依りて作る歌二首
4290 春の野に霞たなびき うら悲し この夕かげに鴬鳴くも
春野尓 霞多奈伎 宇良悲 許能暮影尓 鴬奈久母
4291 わが宿のいささ群竹 吹く風の音のかそけきこの夕べかも
和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母
廿五日、作る歌
4292 うらうらに照れる春日に雲雀あがり こころ悲しも 一人し思へば
宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比登里志於母倍婆
春日遅々にして、鶬鶊正に啼く。悽惆の意、歌に非ずは撥ひ難し。よりて此の歌を作り、もちて締緒を展ぶ。但し此の巻中、作者の名字を稱はず、ただ年月・所處・縁起のみを 録せるは、皆大伴宿禰家持の裁作れる歌詞なり。
五年正月四日、治部少輔石上朝臣宅嗣の家にして宴する歌
4282 言しげみ相問はなくに 梅の花雪にしをれて うつろはむかも
辞繁 不相問尓 梅花 雪尓之乎礼氐 宇都呂波牟可母
十一日、大雪落り、積ること尺二寸あり。因りて拙き懐を述ぶる歌
4285 大宮の内にも外にも珍しく降れる大雪 な踏みそね 惜し
大宮能 内尓毛外尓母 米都良之久 布礼留大雪 莫踏祢乎之
4286 御園生の竹の林に 鴬はしば鳴きにしを 雪は降りつつ
御苑布能 竹林尓 鴬波 之波奈吉尓之乎 雪波布利都々
十二日、内裏に侍ひて千鳥の喧くを聞きて作る歌
4288 川洲にも雪は降れれし 宮の内に千鳥鳴くらし居む所無み
河渚尓母 雪波布礼々之 宮裏 智杼利鳴良之 為牟等己呂奈美
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