2022年9月21日

祓/12 奥の細道

蕪村「奥の細道図上巻」那須野

    跋ばつ

 からびたるも、艶えんなるも、たくましきも、はかなげなるも、おくのほそ道見みもてゆくに、おぼえず起たちて手たたき、伏して村肝むらきもを刻む。一般ひとたびは蓑みのを着きる着るかゝる旅せまほしと思ひ立ち、一度たびは坐してまのあたり奇景を甘あまんず。かくて百般ももたびの情に鮫人かうじんが玉を翰ふでにしめしたり。旅なるかな、器うつはものなるかな。ただ嘆なげかしきは、かうやうの人のいとかよわげにて、眉まゆの霜のおきそふぞ。

  元禄七年初夏       素竜書



「からびたる」は、枯淡なおもむき。村肝は「深く心に感動をおぼえるさま」と補注にあり、「伏して村肝むらきもを刻む」を、「頭こうべを垂れて心肝しんかんを切り刻むごとき深い感銘に誘われる」と評釈にありました。でね「村肝むらきも」は万葉集だと心こころにかかる枕詞です。

巻四 大伴宿禰家持贈娘子歌

720 村肝の心砕けてかくばかり
  わが恋ふらくを 知らずかあるらむ

村肝之むらきもの 情揣而こころくだけて 如此許かくばかり 余戀良苦乎あがこふらくを 不知香安類良武しらずかあるらむ


 また一冊、ぼろぼろにしちゃいました。書き始める前に撮っとかないとね。が、幸い、ウェブ検索したらいくつかヒットしました。息の長い古典ならではかと… モチパクで表紙だけあげました。でね、カバーは義仲寺蔵の「那須野の図」芭蕉翁絵詞伝からのようです。義仲寺には芭蕉の墓もあるとか。で、奥の細道図から那須野の辺りを貼っといて…

 小ちひさき者ふたり、馬の跡慕したひて走る。ひとりは小姫こひめにて、名を「かさね」といふ。聞きなれぬ名のやさしかりければ、


  かさねとは八重撫子やえなでしこの名なるべし 曾良


おくのほそ道 頴原退蔵・尾形仂 角川ソフィア文庫

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