八重咲きしら梅 2020.12.31 上州藤岡上落合
梅花の歌三十二首 序を并せたり
天平二年正月十三日に帥の老の宅に萃まりて、宴會を申きき。
時に初春の令月にして、氣淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす。加以、曙の嶺に雲移り、松は羅を掛けて盖を傾け、夕の岫に霧結び、鳥は縠に封めらえて林に迷ふ。庭には新蝶舞ひ、空には故鴈歸る。
ここに、天を盖とし、地を坐とし、膝を促け觴を飛ばす。言を一室の裏に忘れ、衿を煙霞の外に開く。淡然に自ら放にし、快然に自ら足る。
若し翰苑にあらずは何を以てか情を攄べむ。詩に落梅の篇を紀す。古と今とそれ何ぞ異ならむ。宜しく園の梅を賦して聊かに短詠を成すべし。
天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封縠而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 促膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以攄情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠
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