2022年6月5日

越中秀吟/耳コピ万葉集

巻19から3月1日、2日、3日の歌。あと若月みかづきの歌 ( ^ - ^ )

天平てんぴゃう勝寶しょうほう二年三月一日のゆふべに、春のその桃李たうりの花を眺矚ながめて作る歌二首

4139 春の苑紅にほふ 桃の花下照る道に 出で立つをとめ

春苑はるのその 紅尓保布くれなゐにほふ 桃花もものはな 下照道尓したでるみちに 出立いでたつをとめ

4140 わが園の李の花か庭に散る はだれのいまだ残りたるかも

吾園之わがそのの 李花可すもものはなか 庭尓落にはにちる 波太礼能未はだれのいまだ 遺在可母のこりたるかも

 

かけしぎを見て作る歌

4141 春まけて物悲しきに さ夜ふけて羽振き鳴く鴫 誰が田にか住む

春儲而はるまけて 物悲尓ものがなしきに 三更而さよふけて 羽振鳴志藝はぶきなくしぎ 誰田尓加須牟たがたにかすむ

 

二日、柳黛りうたいぢて京師みやこを思ふ歌

4142 春の日に張れる柳を取り持ちて 見れば都の大路し思ほゆ

春日尓はるのひに 張流柳乎はれるやなぎを 取持而とりもちて 見者京之みればみやこの 大路所念おほちしおもほゆ

 

堅香子草かたかごぐさの花をぢ折る歌

4143 もののふの八十をとめらが汲みまがふ 寺井てらゐのうへの堅香子の花

物部乃もののふの 八十嬬等之やそをとめらが 挹乱くみまがふ 寺井之於乃てらゐのうへの 堅香子之花かたかごのはな

 

歸るかりを見る歌

4144 燕来る時になりぬと 雁がねは本郷思ひつつ 雲隠り鳴く

燕来つばめくる 時尓成奴等ときになりぬと 鴈之鳴者かりがねは 本郷思都追くにしのひつつ 雲隠喧くもがくりなく

 

遥かに江をさかのぼる船人の唱を聞く歌

4150 朝床に聞けば遥けし 射水川朝漕ぎしつつ唱ふ船人

朝床尓あさとこに 聞者遥之きけばはるけし 射水河いみづかは 朝己藝思都追あさこぎしつつ 唱船人うたふふなびと

 

三日、かみ大伴宿禰家持のやかたうたげする歌三首

4151 今日のためと思ひて標し あしひきの峰の上の桜かく咲きにけり

今日之為等けふのためと 思標之おもひてしめし 足引乃あしひきの 峯上之櫻をのへのさくら 如此開尓家里かくさきにけり

4152 奥山の八峰の椿 つばらかに今日は暮らさね ますらをの伴

奥山之おくやまの 八峯乃海石榴やつをのつばき 都婆良可尓つばらかに 今日者久良佐祢けふはくらさね 大夫之徒ますらをのとも

4153 唐人も筏浮かべて遊ぶといふ今日ぞ わが背子 花かづらせな

唐人毛からひとも 筏浮而いかだうかべて 遊云あそぶといふ 今日曽和我勢故けふぞわがせこ 花縵世奈はなかづらせな

 

皐月五日の月

大伴家持の霍公鳥ほととぎすの歌

8/1494 夏山の木末の茂に 霍公鳥 鳴き響むなる声の遥けさ

夏山之なつやまの 木末乃繁尓こぬれのしげに 霍公鳥ほととぎす 鳴響奈流なきとよむなる 聲之遥佐こゑのはるけさ

 

天平十九年四月十六日、夜のうちに、遥かに霍公鳥ほととぎすくを聞きて、おもひを述ぶる歌

17/3988 ぬばたまの月に向ひて霍公鳥鳴く音遥けし 里遠みかも

奴婆多麻乃ぬばたまの 都奇尓牟加比氐つきにむかひて 保登等藝須ほととぎす 奈久於登波流氣之なくおとはるけし 佐刀騰保美可聞さととほみかも

 

大伴宿禰家持の初月みかづきの歌

6/994 振りさけて若月見れば 一目見し人の眉引き思ほゆるかも

振仰而ふりさけて 若月見者みかづきみれば 一目見之ひとめみし 人乃眉引ひとのまよびき 所念可聞おもほゆるかも

 

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